いちご一会とちぎ国体 出場者インタビュー

あけましておめでとうございます。

令和4年度OB主幹の齋藤です。

今回、いちご一会とちぎ国体に宇都宮大学弓道部OBの犬塚友佳子さんと、宇都宮大学弓道部4年の滝田実優さんが選手として出場いたしました。

結果は、成年女子遠的優勝、近的5位です。なお成年女子遠的は、初優勝でした。

試合の様子は以下のリンクより視聴可能です。

弓道 アーカイブ – 国体チャンネル (japan-sports.or.jp)

今回は、このお2人に国体の感想や日常生活との両立の工夫、現役へのアドバイスをお聞きしました。

滝田実優さんへのインタビュー

国体の感想をお願いします。

遠的で優勝,近的で5位という結果を残せたことはとても嬉しかったです.ただ,近的については決勝トーナメント1回戦で負けてしまい悔しさが残っています.

地元開催ということもあり,大会中にも声をかけて頂くことが多く,とても緊張しましたが,その応援の声が力にもなったと感じています.全体としては全国レベルの選手の射を見ることができたり,独特の雰囲気を感じたりと,良い経験ができてとても楽しかったです.

日常生活と弓道の両立で、苦労したことや大変だったこと、それに対する工夫などがあれば教えてください。

学校で練習する際,練習できる時間帯や曜日が決められていたため,日によっては練習ができなかったり十分な練習ができなかったりしたことが大変でした.そこで中学時代にお世話になった先生の道場や,監督に紹介していただいた道場などで練習をさせていただきました.今までの人との関わりの大切さを感じました.

選手に決まってからは毎週土日が練習となっていたため,平日のうちに1日は休息日を作り,課題等を終わらせるようにしていました.

最後に、現役へのアドバイスをお願いします。

技術的なことはあまり偉そうに言えません.ただ私が引くときには,一つ一つの動作において「ここをこう気を付ける」というのを考えながら引いています.本番で緊張したときに逆にここに気を付けていれば大丈夫という自信になるからです.考えすぎるのはよくないですが私はそこを意識して練習しています.

最後に早気と怪我には気を付けて,日々の練習を頑張ってください.よい報告が聞けることを期待しています.

犬塚友佳子さんへのインタビュー

国体の感想をお願いします。

自県開催であるいちご一会とちぎ国体成年女子の部で、遠的優勝・近的第5位という成績を残すことができとても嬉しく思います。

今回初出場ということで、矢数をかけ、様々な大会に出場しベストな状態を探究するなど、多くの準備をして挑みました。実際に国体が始まると、控えに有名選手が何人もいたり、教士や範士の先生がいたりと、その豪華さに驚きました。会場の雰囲気は1日目、2日目の予選では和やかでチームごとに交流していましたが、3日目、4日目の決勝になると勝ち残ったチームのみになり少し空気も張り詰めていました。遠的は予選を1位で通過し、トーナメントも順調に勝ち進みました。決勝戦では全員が称号を持つ石川県との対戦でしたが、チームの結束力で優勝を勝ち取ることができ、退場後のチームスタッフや競技役員の方からの声で思わず涙が溢れました。予選よりも点数が伸びず悔しさはありましたが、安堵の方が大きく嬉しかったです。

近的は予選通過後、トーナメント1回戦で敗退し5-8位決定戦の競射を行いました。1人一手計6射の総的中数で争いましたが、6射皆中で愛媛県と同中。射詰の結果、2中で同中、再度射詰の結果2中で勝利し第5位となりました。私自身、競射で皆中しましたが、なぜトーナメントで出せなかったのかという自責の念に駆られました。

総合的に満足いく結果ではありませんでしたが、自県開催で多くの人に支えられた大会で優勝という経験ができ、今後の目標の糧にすることができました。また、報道を通じて弓道というスポーツを広めることができたのではないかと思います。

国体は全国の射手が集まる祭典のようなもので、各地で熾烈な争いを制した人だけが集まれる大会です。学生弓道と比べると盛り上がりや的中主義は欠けますが、所作や品性をより感じられる貴重な場だと思います。もし皆さんが学生弓道を終えたとき、不完全燃焼だったりその後も弓を続けていこうと思ったなら、ステップアップの中間地点として是非国体に挑戦してみて下さい。

日常生活と弓道の両立で、苦労したことや大変だったこと、それに対する工夫などがあれば教えてください。

  国体に向け練習会に参加し始めたのは2021年の秋頃でした。私の仕事はシフト制のため練習会に参加でき、職場の近くに道場があったため仕事終わりに練習していました。しかし心身の疲れをとることができず体調を崩すこともありました。幸い選考時期の前だったため療養することができましたが、選考中に病気や怪我をすれば良い成績を残したとしても選考の対象外になっていたかもしれません。その点で働きながら練習時間を確保し、仕事と練習、休息のバランスを取ることは難しかったです。

また前文にもある通り私は風邪から軽い肺炎になり約2週間弓を引けない時期がありました。それだけでも体力や筋力がなくなり中て勘も鈍ったので、ブランクを生まないことが大切だと思います。人によって変わりますが、私は最低3日に1回40射以上の練習によってそれらの維持ができると考えています。毎日矢数をかけることが一番ですが、自分で最低ラインを引くと余裕が生まれ、両立が上手くいくのではと思います。

そして周囲からの理解も必要不可欠です。弓道はマイナースポーツで知識を持っている人は少なく、練習会参加や国体出場のために仕事を休むことに嫌悪を示す人もいました。ただ引くだけでしょという言葉や趣味だよねと軽く扱われ、弓道を知らない人には誤解されることが多かったです。弓道はどのような競技でどのような練習をしているのかを話すと、驚きや感心を示していただけたので積極的に伝えてみるといいのかもしれません。仕事関係だけでなく、友人や恋人にも理解は必要だと思います。日常生活でどこに重きを置くかを明確にし優先順位をつけることで、自分自身も選択が楽になります。

最後に、現役へのアドバイスをお願いします。

大学生活で学びながら弓を引くことは大変だと思います。楽しく弓を引けているなら是非続けてください。大人になっても老いても弓は始められますが、学生弓道は今しかありません。仲間と一緒に修練を重ね、試合で力を発揮できたときの結束力や達成感はどんな経験よりも価値あるものです。そして弓を引くのが辛く苦しい人もいると思います。そんな人は一度弓から離れることも選択肢ですが、続けていけば必ず悩みが晴れる時がきます。それがいつになるかわからず足掻いたとしても、いつしか経験のひとつになっています。しかも自分だけの特別なものです。経験しようとして得られるものではないので、確実に強くなるための武器になると思っています。

また弓道は自分との闘いです。対戦相手はいても自分に勝てば的中に繋がり、試合での勝利となります。私は練習会に参加していくうちに自分の癖や心理状態を知り、いつ何をどう動かせばいいかを覚えました。引き分けから会への移行で弓手肩が抜ける癖は、目通り過ぎで弓手への意識を強くし弓の力を肩の前方で受けることでカバーしたり、離れでたまに前離れになってしまう癖は、弓構えで肘を起こし引き分けで背中に寄せながら拳は弦と拮抗して伸び合いを深くするなど、自分の骨格に合わせた動きを習得することで再現性を高めていきました。まずは自分の改善点を見つけ、優先順位をつけて一つずつ治していくことで正射に近づけると思います。そこで指導を行う方も、相手が何を優先しているのか考慮して伝えることが大切です。

今の弓道部は指導者がおらず仲間同士で教えあっていると思いますが、正しい指導ほど成長に繋がるものはないと思っています。しかし感染症予防のため指導者をたてるのは難しいと思うので、更衣室の棚にある教本を是非活用してほしいです。先人達の言葉は堅く、理解しにくい部分もありますが、嘘はないはずです。疑問に思うものは仲間と議論して試してみるなど、工夫できることはたくさんあると思います。それから栃弓連の年間予定表にある通り一般練習会が行われているので、意欲のある人は一度参加してみるといいかもしれません。

弓道はとても楽しいものだと思いますが、学生の本分は勉学です。なぜこの大学に入ったのか初心を忘れず弓を引いてください。もしも万が一、弓道に人生をかけたいと思うほどはまってしまった場合、そのときは躊躇せず弓道の世界に飛び込んでください。そうして後悔するのは、飛び込まなかった時ほどではないはずです。もちろん、家族や友人に相談することを忘れないでください。自分で決めることに誇りを持って、それぞれの将来に進んでほしいと思います。

今回、文章と言う形ではありますが、皆さんにお伝えできる機会をいただきありがとうございました。拙い文ですが少しでも想いが伝われば幸いです。皆さんより少し先を進んでいる私でも、思うように引けない時がありますが、それこそ弓道の醍醐味だと思って練習しています。せっかく弓を始めたのだから、楽しむことを一番にしてください。好きこそ物の上手なれです。そしていつか同じ舞台で共に弓を引けることを願っています。

編集後記

自分がお世話になった先輩と、ともに切磋琢磨してきた同期が国体という大きな舞台で弓を引いている姿を見ることができたのは、とても嬉しかったです。自県開催という大きなプレッシャーはあったと思いますが、4日間わくわくしながら現地で観戦させていただいたことは、自分にとって忘れられない思い出となりました。

本当に、素晴らしかったです。感動をありがとうございました!